闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現場での悩みや葛藤に対し色々な考え方や方法を提案するという形で闘っていきます。

水分1500以上、オムツゼロについての考え

f:id:kaigobilly:20190414213252p:image

某SNSで話題になったので、この取り組みについて自分の意見を述べたいと思います。

 

ものすごく簡単に言うと「この取り組みには賛同できない」です。

が、取り組んでいる人や施設を否定するわけではないので、そこはご理解ください。

 

 

では、本題です。

ご存知の方も多いと思いますが、この取り組みの柱は

・水分を1500cc以上摂取

・下剤は使わない

・食事は常食、食物繊維をとる

・トイレでの排便を促す

・歩かせる

といったものです。

 

私がいちばん引っかかるのが「水分1500cc以上」です。

ここには体格も性別も年齢も病歴も問わず、この数値が推奨されています。

「水分を沢山とると覚醒状態が良くなり、認知症状も改善されたり、全介助の人が一部介助になる」

とのこと。

 

高齢者は水分を吸収しにくい場合もあるし、脱水もしやすいので、それによるせん妄はありうる話ですが…

 

個別アセスメントをしたうえでの「1500cc」であれば問題ないのですが、私が知る施設数カ所、及び近隣の施設では、そこまでしておらず、とにかく1500cc摂取することが目標とされていました。尿などで身体から出ていく水分量すら測っていませんでした。

 

水分が身体にとって大切であることは否定しません。

脱水の危険性は周知の通りだし、人手不足時間不足といわれている介護施設は水分に対する意識は高くはない(そこまで追いつかない)と思います。

 

が、とりすぎた水分は心臓など、内臓に負担をかけます。

認知症状にしろ何にしろ、まずはその原因となるものを考え、医師などの医療職と連携を密にして対応しなければなりません。

そもそも、何でもかんでも水をがぶ飲みして解決するなら、医者なんていりませんね。

 

また、特養は特に心身状態が低下している人が多く、水分そのものを理解できなかったり、全介助で時間がかかる方なども多く生活しています。自分の意向を伝えられない方ですね。

 

そんな方達に対して、そこまでの量をすすめるということは、普段の業務との兼ね合いもあり結果的に(利用者からみて)

・強引な介助

・強制的な水分補給

になるわけです。

 

1500cc以上摂取ということは、コップ1杯200ccとして、7杯ちょっと。

食事やおやつの時間などのどこかのタイミングで多めに出すか、コップ1杯ずつを1日の中で分散させて出すことになります。夜起こしてまで飲ませているところもあると聞きます。休む時間がないですね。

また、いくらなんでも食事の時間に多めに水分を出されても飲めません。水分好きな方なら別ですが。

 

もう一つ、この取り組みは、水分摂取量を毎日記録し、集計します。

ここまでは、普段の観察事項として不自然さは感じませんが、私が気になるのは

 

「エリア内の取り組み参加施設の水分摂取量をランキングとして発表している」 

 

です。これにはオムツの使用割合なども含まれます。

 

このランキング、順位が高ければ表彰され、順位が悪いと指導が入ります。

そうなると、順位を上げることが目的となり褒められることに喜びを感じ、怒られないように指導内容を行おうとするでしょう。

 

そこには利用者や家族の気持ちはなく、提唱者と賛同者だけで盛り上がっています。

 

1500cc以上という目標水分摂取量を定める前に…

 

本人や家族が希望していますか?

その方の体型、年齢、性別はどうですか?

病歴は確認しましたか?

食事に入っている水分量はわかりますか?

排尿量は測っていますか?

各専門職の見解はどうですか?

口をこじ開けるなど、強引な介助になる可能性はありませんか?

 

 

…というのが私の思いです。

 

ただ、当時老施協も推奨していたこともあり、脱水がもたらす危険性、水分の重要性は以前よりついてきているように思えます。

 

また、実際に取り組んだ結果、状態が改善された例もあります。

なので、全部を否定するわけではありません。この取り組みが合う方もいると思います。

 

そういう方は、続けていけば良いと思うし、私も勉強になるので、その事例を教えて欲しいなとも思います。