闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現場での悩みや葛藤に対し色々な考え方や方法を提案するという形で闘っていきます。

都合よく「個別対応」を使い分けるな①

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少し口調が悪いですが、お許しください。

 

今日は介護現場で耳にする

「個別ケア」「相手に寄り添う」「傾聴」

等の言葉についてです。

 

 

利用者と関わるにあたって、

「相手の話を聞く」

というのはごく当たり前のことですよね。

 

「そんなの当たり前。何を今更」

 

と思う方もいるかもしれません。

 

では、こういう場合はどうでしょう。

 

・離床介助はゆっくりやってほしい

・お風呂は長く入りたい

・排泄介助のたびにかゆみ止め・痛み止めを塗ってほしい

・介助の順番を指定する

 

等の希望がある方。

 

職員に

「ワガママ」「細かい」「めんどくさい」などと思われるような方です。

 

 

対応する人のパターンとして

①じっくり話を聞く

②そこまでできないと断る

等があります。

 

①については、その人に時間をかけるあまり、その後の業務に支障が出るかもしれません。

②については、表に出す出さないは別として、不信感や不快感を招くかもしれません。家族などを通じ、後々の事業所の評判につながるおそれもあります。

 

どうしたらいいでしょうね。

 

私は、①を行ないつつ、業務の見直し、引き継ぎなどで対応するといいと思います。

 

解説しますね。

 

訴えが細かい人は、大抵理由があります。なので、話をしながらさりげなく理由を聞き出します。

 

・離床介助はゆっくりやってほしい

→体が痛いから・介助が荒っぽいから

 

・お風呂は長く入りたい

→毎回すぐ上げられて寒いから

 

・排泄介助のたびにかゆみ止め・痛み止めを塗ってほしい

→かゆいから・寒いから・石鹸があってないから

 

などです。

 

ごく当たり前の理由じゃないでしょうか?

断る理由はないと思います。

 

 

ただし、具合が悪い人がいたり、センサーが鳴ったりして他の利用者に危険が迫っている場合はその理由を伝えていったんその場を離れます。

 

それで苦情につながるのであれば、別の方法を考えます。

 

また、他利用者の対応に支障が出るほど極端に時間がかかるような内容のものは検討が必要です。

 

「全部は無理だけどここまでなら対応できる」ということを説明しておく必要がありますし、「ここまでできる」という明確な線引きをしっかり取り決めておかなければなりません。

そうでないと、個々の主観や気分で対応内容に差が出てしまいます。

 

何でもかんでも言うことを聞くのとは違いますので、注意してください。

 

 

これに対し、

「他の人の対応ができない」「特別扱いして、平等じゃない」

という反論があります。

 

確かに気持ちはわかります。

 

しかし、この場合に引き合いに出されるのが、

「意思表示ができない人」

もしくは、

「そこまで強い訴えをしない人」

がほとんどです。

 

個人差はあるにしろ話せる人がこれだけの思いがあるのなら、意思表示ができない人も同じような思いをしていることが予測されます。

 

「何も言ってないから」

「本当にそう思ってるかわからないから」

 

などと、業務優先で対応していることが多いのではないでしょうか?

 

それに、前述した「訴えが多い人」と同程度の想い、要望をもっていたとしても、そこまで時間をかけて個別対応はしないでしょう。

 

それは「意思表示ができない」から。

 

対応しなかったところで苦情等につながらないので、それであれば訴えの多い人の対応を優先したほうが効率はいいでしょう。

 

それを都合のいい時だけ引き合いにだすのはどうかと思います。

 

 

話してくれるだけありがたいです。どこをどうしてほしいかこちらもわかるのですから。

そこから見えてくる課題や気づき、ひらめきもあります。

ただのワガママで片付けられない、隠れたニーズが浮かびあがるかもしれません。

利用者を代表して言ってくれてるようなものです。

 

それを「ワガママ」で片付けて対応を疎かにしているなら、そういった気づきもないです。

表面上は業務が回るため、さほど意識もしないでしょうけど。

 

もし、訴えをしなくなったら、それは黄色信号です。

「納得してもらった」のではなく、

諦め、怒り、意欲低下などにつながっている可能性が高いですし、食事量などで表に出てくることもあります。

 

それは声かけという名の「説得」です。

 

「落ち着いてくれた」などと思わないで下さい。

対応の成果が出たのではなく、対応に問題がある可能性が高いです。

 

 

ではもうひとつ。

 

そういった方が

・食事量が落ちた

・意欲がなくなった(食事をとらない・起きたがらない・口数が減ったなど)

・苦情がきた

・看取り期に入った

 

などとなった場合です。

 

こうなった場合話に上がるのが

「もっと話を聞きましょう」

「好むものや活動を提案しましょう」

「要望を聞きましょう」

「個別ケアを充実させましょう」

 

となるわけです。

 

遅いです。

それに、最初の主張と矛盾しています。

 

だったら最初からしていればいいのです。

本当にどうしてもできないのであれば、そういった案は出ないわけですし。

 

職員配置や環境面の問題もあるでしょうが、

「意思表示ができない人」

の対応はそこまで細かくしていないことが多いのではないでしょうか。

 

もうその時点で「個別ケア」ができていないので、切羽詰まった状況で個別ケアと言っても説得力がありません。

それなのに、「他の人の対応ができない」とはどういうことでしょう。

その人達のせいにしていませんか?

 

 

次に「平等」についてです。

 

「●●さんばかり手厚い対応で、同じことを全員にできない。だから少しは遠慮してもらわないと」

 

という会話を耳にしたことがありませんか?

 

まず、全員が全員、同じ時間帯で同じ要望をもっているとは限りません。

そもそも、意思表示ができない人については、要望を知らない、もしくは調べてすらいないというのが多いのではないでしょうか。

 

必要なケアを必要な時に必要な人に行うのが「平等」です。

 

食事を例にとります。

 

「Aさん(常食)は何回も外食に連れて行ってる。他の人が行けなくて不平等だから遠慮してもらおう。他の人は刻みやソフト食だし、長く起きてられない人も多いし」

 

という話が出たとします。

 

・他の人は全員外食ができる食形態ですか?

・他の人は全員外食ができる体力がありますか?

・他の人は全員外食を望んでいるか調べましたか?

 

話を出すならそこまで調べてください。

咀嚼・嚥下状態に合わせた形態で食事をとってもらっている、体力に合わせて離職時間を変えている。

 

その人に合った対応をしているので、「平等」といえます。

 

例に出した人は、外食ができる心身状態を持ち、たまに行く外食が口に合い、外食をしたいという希望があるのです。

それを対応しているだけです。

(車の手配などはまた別問題です)

 

仮に、「全員」同じ要望があったなら、時期ををずらして対応です。

そんな事例は聞いた事がありませんが。

 

 

平等を盾に「やりたくない」というのが見て取れます。

「できない理由」を探しているのではないでしょうか。

 

全員一律の対応が平等だと思っていませんか?

 

 

…とはいえ、意思表示ができない人の思いを汲み取るのは難しいです。

快・不快は表情で推察し、嗜好は家族から話を聞くのが現実的でしょうか。

 

 

続きます。