介護施設(ここでは特養を例にとります)では、共有ホール(ユニット)、廊下などに様々な物品を置いたり、飾り付けをしたりしています。
「家庭的」がコンセプトであれば家にあるような家庭用の家具、電化製品、置物。
「ホテルのように」がコンセプトなら豪華な装飾品、大きなテレビ、お洒落な家具などでしょうか。
どちらにも良さがあるので、優劣を決めるものではありませんが、どちらにしてもそういった居住環境を決める際に注意してほしいことがあります。
それは、
「利用者が見える位置・高さに合わせる」
ということです。
自分の所属する施設の環境を思い浮かべてみてください。
時計、テレビ、食事の献立、施設からの案内などが置かれている位置、高さ、字の大きさはどうですか?
中には特に違和感を感じない人もいると思います。
だいたい「一般的な(公共施設やショッピングモールなど)高さ、角度、字の大きさだったりしていませんか?
そうだとしたら、普段我々が見慣れている位置なので、特に気にならないでしょう。
しかし、ここで少し考えてみてください。
施設で暮らしている人は、加齢や病気などで我々より心身機能が衰えています。
車椅子で過ごすため目線が低くなった人には通常のテレビや時計の高さだと高すぎます。
そりゃあ時間もわかりませんよね。
視力が落ちた人に通常の紙、字の大きさでは小さすぎます。
何が書いてあるかわかりませんよね。
それでは利用者からみれば「何もない」と同じ意味で、本来当たり前のようにある生活情報がわからないということになります。
そこで生活する側からすれば、これほどつまらない生活はないし、その人の性格や病状(認知症など)によってはこの時点で不安になったり落ち着かなくなったます。
勿体ないですよね。
なので、環境を変えてみましょう。
・時計やテレビの高さは、そこで生活する利用者の平均の目線に設定する。(実際に車椅子に乗ってチェックしてみるとある程度高さのイメージがわくと思います)
・掲示物や案内文などはできるだけ大きな紙で大きな字で作る。
などです。
普段見慣れない高さに物が来て、普段より大きすぎる案内文が貼られるので、最初はおちつきませんが、あくまでも施設を利用して生活しているのは「利用者」です。
そういったちょっとした工夫、配慮で生活しやすさも変わってきます。
外部向けの豪華な装飾、お洒落な家具、こだわったホームページなども結構ですが、そこで注目されても実際の生活環境が利用者に合っていなければ稼動も上がりません。
高級ホテルに置かれているような椅子より、機能的な車椅子の方がよっぽど使えますし、有名メーカーの食器より自助皿の方が使えます。
(ただしそういった物品関係は経営側の方針なども関係してくるので簡単に変更はできないかもしれませんが…)
「ここで生活しているのはどういう状態の人か」
そこを考え一般的なイメージにとらわれず、利用者にとって使いやすく過ごしやすい施設にできるといいですね。