先日、またも介護職員による虐待の報道がありました。
当然ながら虐待はやってはいけないことだし、事実であれば相応の償いをする必要はあると思います。
しかし、これらの報道を見聞きするたび、
介護職員は質が低い。だから虐待をする
というような印象を与えているように思えます。
ちょっと考えてみましょう。
介護現場は、
- ギリギリ、もしくは足りない人員の中で全ての利用者にケアをする。
- 給与や休日などの待遇の低さ
- 何度も同じことを言われたり、暴言暴力に日々耐えている。(病気ということは承知してますよ)
- 社会的地位の低さ
- 訴訟のリスク
- トラブルの矢面に立たされる
などなど…
初めは理想や優しさなどを持って入ってきた職員も、こんな状況が毎日続けば次第に心を蝕まれていきます。
(そんなことないっていう方はぜひ、そういった環境をしばらく体験してみて下さい。大なり小なりそういった感情が芽生えると思います)
虐待をする職員も、全部が全部悪い人ではなかったはず。
初めから問題があるような人は別として、
多くの場合、
徐々に徐々に心を蝕まれ、普通の判断ができなくなり、何かのはずみでタガが外れたり、僅かな不適切なケアがキッカケになり虐待につながったりしているのではないでしょうか。
それだけのストレスの中にいるのです。
だから、研修などで「虐待はいけません」なんて言ったところで、あまり効果はないでしょう。
そんなことわかりきってるし、虐待になる背景を分析してアプローチしていかないとならないのですから。
報道や掲示板などを見ると、そういった背景は一切取り上げられず、事件を起こした個人を責めたり、介護職全体を質が低いと責めたりしているように思えます。
そうなると、
「虐待ばかりするような介護業界にお金を出す必要ない」
と、介護報酬の削減まで検討されるような気さえします。
冗談じゃないですよね。
とはいえ、
「こんなにストレス溜まるんだから虐待しても仕方ない」
とは思いません。
働く側も、自分がそうならないように自分を律する必要があります。
私の経験でいえば、
- 介助が雑になる
- 言葉使いが雑になる
(これらは特に認知症や寝たきりの人に対して)
となってきたら黄色信号です。
これらの場合、「ここまでならいいだろう」というハードルが徐々に下がり、より不適切な対応、ゆくゆくは虐待となる可能性が高いです。
不適切な対応は虐待の入り口ともいえると思います。
なので、
私の場合はそうなりそうな兆候になったらいったん落ち着き、別の仕事をしたり、時には担当業務を変わってもらったり、開き直って時間内に終わらせようとせず、ひたすら丁寧に業務を行うようにしています。
感覚が麻痺して無意識のうちに虐待をするよりよっぽどマシです。
ある著名な先生が言っていたのですが、
「自身の心に防犯カメラを置くような気持ちで働く」
こうするようにしています。自分を客観的に見るためです。
介護現場は初めに書いたような様々な原因で苦しんでいます。
虐待を正当化するつもりはありませんし、多くの職員がそうならないよう頑張っています。
介護現場を叩く前に、(特に介護業界に無関係の方)厳しい配置基準で精一杯頑張っているということはわかって頂きたいです。
(そもそも、「人が少ないんだよ!どうやって一人や二人で全員対応するんだよ!」てのがありますけど…)