ケアマネ時代の事例をもとにお話します。
とある人が看取り対応へ移行するということで、
看取りプランを作成しました。
その際、
家族に意見や想いを訪ねても、
「特に何もありません。お任せします」
と言われることがほとんどでした。
これは通常のケアプラン作成時も同じでしたが…
しかし、
たまたま雑談の中で食堂の話になった時、
ポロっと、
「こんなになるなら、最後に●●亭のご飯を食べさせてあげたかった」
と話がありました。
そこで、
「じゃあやりましょう!」
と動き始めました。
リスクはもちろん説明しました。
家族の同意をもらったうえで、各職種、管理者に猛プッシュをかけました。
何しろ時間がないので。
そして不測の事態に備えたフォロー体制も整えました。
その人は、
家族との昼食会
という形にして、
大家族で(元々家族が付き添っていた)
食事会を行いました。
家族も全員その食事をするので、部屋の中はご飯の香りでいっぱいです。
もちろんその人は食事なんかとれる状態ではありません。
なので、
口腔ケア用の道具にその食事のタレなどをつけ、
口の中にいれました。
また、
部屋の中にたちこめるご飯の香りで、鼻から少しでも食事を感じられるようにしました。
後日その人は残念ながら旅立ってしましましたが、
「もう食べることなんて無理だと思っていたのにここまでしてもらえて…」
と家族からはとても感謝され、
丁寧なお礼状まで頂きました。
この事例を通して感じたことがあります。
あらたまって、
「何か困ってることはありますか?」
「その時がきた場合どのような形を望まれますか?」
なんて聞かれても答えられない。
本人はもとより、家族も。
施設で生活をしているため、家族は職員に比べたら利用者の顔を見る機会は少ないです。
そのため状態の変化を感じやすくなります。
久しぶりに顔を見に来た家族や親類が、
「こんなに弱っている!どうなっているんだ!」
と問い詰めてくる背景もここにあるかと思います。
そのため、普段接している職員が積極的に状態を伝えた方が良いと思います。
何も改まって…ということではなく、挨拶のついでに軽く…みたいな感じで良いかと思います。
その積み重ねが家族との信頼関係にも繋がってきます。
そうすると、雑談の中でポロっと本家を言ったり、気になっていることなどを言ったりする場合があります。
それを逃さずキャッチしていく。
家族の事業所に対する感情も掴み取ることができ、
気になる点を早めにキャッチすることでクレームなどに繋がずのを防ぐことにもつながります。
家族だけではありません。
今は元気な利用者もいずれは「その時」を迎えます。
また、認知症状が悪化したり、何かのはずみで寝たきりになり、コミュニケーションがとれなくなることもあります。
その時になって
「●●さんの楽しみは〜」
なんて議論しても遅いのです。
当の本人がコミュニケーションが難しくなるのですから。
なので、
少なくとも話ができて認知面に問題がない場合は、
雑談の中に「そういう話」をさりげなく入れてみると良いと思います。
例えば、
利用者とテレビを見てる時に、
お墓や葬儀会社のCMが出てきた場合。
「まだまだ皆さん元気なのにこんなの見せられてもねえ…。
でももし、ああいうのを利用することになったら、私なら好きなものに囲まれたいですね。どう思います?」
みたいな感じです。
意外と本音をポロっと言ってくれたりします。
(私の実体験です)
これを応用して、食事や入浴、接遇など、普段のサービスをどう思っているか、
今現在の困りごとは何かの断片を聞き出すこともできます。
利用者との会話は色々なヒントが隠されています。
話をしていると他の職員に
「さぼってる」
「特別扱いしている」
などと思われたり、
普段の業務に追われてなかなか時間がとれなかったりしますが、
話をするというのは立派な業務のひとつです。
ないがしろにはしたくないものです。
それと、
苦情が起こる背景には、
日頃の小さな不満の積み重ね
があります。
日頃からコミュニケーションをとれていれば、
苦情に発展することも少なくなるかもしれません。
…余談ですが、この方法、
職員同士にも使えます。
人事考課の面接などにも使えるし、
普段の意見や不満(笑)などを雑談の中にさりげなく入れておくと、いざという時話が進みやすいです。
ストレスを溜めたくはないですからね。