闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現場での悩みや葛藤に対し色々な考え方や方法を提案するという形で闘っていきます。

介護現場での転倒事故にどう向き合うか

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介護現場で起こりがちな「利用者の転倒事故」。

加齢や病気などで心身に変化がある人達であり、

たった一度の転倒で寝たきりになることも珍しくありません。

 

近年では利用者の転倒が元で裁判沙汰になるなど、

職員も常に気を張る必要があり、それがストレスにもなっています。

 

かといって、

動くからと安易に身体拘束をするわけにもいきません。

利用者の自立支援とリスク管理、両方を考える必要があります。

 

今日は職員を悩ませる転倒事故について考えてみたいと思います。

 

転倒事故がもたらす危険性

要介護者でなくても、若者であっても転びます。

私だって転びます。

 

しかし前述したように、加齢や病気などで心身に変化がある人達の場合は、たった一度の転倒で骨折し寝たきりになったり、

受け身をとれず顔や頭を打ち命に関わる事態になったりします。

 

更には痛みなどから普段と違う行動をとったりし、それらが更に対応の大変さに繋がったりします。

 

最近では転倒→骨折などの場合、施設の対応が悪い、安全配慮を怠ったなどと、裁判に持ち込まれることもあります。

 

仮にこちらの対応に正当性があったとしても、裁判となればそちらの対応に人員を割かれたり、職員のストレスとなったりします。

 

一部で

「転倒する権利だってある」

といった意見もありますが、

 

ひとたび転倒となれば、場合によっては利用者自身も事業所も大変になるのです。

 

なぜ転倒は起きるのか?

これは理由をあげればきりがないし、様々な要因が重なることも多いですが、

 

はじめに利用者自身が、

何かをしようとした

どこかに行こうとした

何かを思いついた

 

などの理由で動き出そうとしますが、

 

脚力の低下

体力、体調不良

視力、視界の低下

認知面の低下

病識の欠如

転びやすい環境(物が乱雑など)

などの理由で転んでしまうといった流れになるのかと思います。

 

当然、利用者にとっては「何か目的があるから」

なわけであって、

それはいつ始まるかわかりません。

 

転倒は防げない

要介護者…というよりは、人間である以上、

いつ、どんなことが起こるかわからないし、

人の行動をコントロールなどできません。

 

ある程度の予測はつくかもしれませんが、限度があります。

 

加えて、介護施設の人員にも限りがあります。

一人一人に完全にマンツーマンでついて歩くわけにもいきません。

 

自分達がおかれた環境でできることをやっていきましょう。

「何が何でも転倒させない!」

といった考えでは現場は疲弊し、かえって事故の元です。

 

転倒対策における注意点

介護現場でひとたび転倒事故が起こると、何かしらの対策を立てると思います。

 

対策でよくあがりやすいのは、

センサーマットの設置

こまめな声かけ

付き添いの徹底

 

などでしょうか。

 

これらの対策の良い悪いは置いておいて注意することがあります。

 

それは、

利用者の行動に何かしらの制限をかけていないか?

ことです。

そんなつもりはなくても、無意識のうちにそういう方向に持っていく…

そんな風潮もあるのです。

 

勿論、利用者の状態を踏まえれば、結果として何かしらの制限がかかることだってあります。

それも支援のひとつだし、利用者の意思を尊重しすぎて何でもかんでも好きに動いてたら、

生活自体に支障が出るでしょう。

 

「本当にそれが必要か?」

という考えが必要ということです。

 

 

 

利用者が何故動こうと思ったかを調べる

上記については、

 

転倒対策に意識が向きすぎて、

利用者の行動の背景や利用者自身の気持ちが置いてけぼりになっている可能性があります。

 

寝苦しかったのか、

痒かったのか、

トイレ(オムツ)なのか、

暑いのか、寒いのか、

フロアが居心地が悪かったのか、

ここがどこかわからなかったのか、

などなど。

 

利用者から話を聞くのは勿論、

言動や行動、習慣や生活リズムなどで少しずつ情報を集めていく必要があります。

 

そして、転倒のきっかけとなった「動く理由」にアプローチをする。

 

そうしたら、次のステップです。

 

利用者が思うように動けなかった要因を調べる

ある程度理由がつかめたら次は、

 

「利用者が本来したかったけどできなかった要因」

を調べます。

 

最初の方で述べましたが、

 

脚力の低下?

体力、体調不良?

視力、視界の低下?

認知面の低下?

病識の欠如?

転びやすい環境(物が乱雑など)?

 

といった感じで調べ、目星をつけていきます。

 

例えば、

転びやすい環境ならば環境を整えたり、

認知面の低下であれば少しでもわかりやすいような工夫を考えたり、

脚力低下ならば機能訓練指導員に相談し、筋力向上が見込めるかの検討

などです。

 

できる限り利用者の行動を抑制をせず、施設でできることはしていく。

 

そうしないと結果として利用者が自分でできる部分を間接的に奪っていくことにつながりかねません。

 

余談ですが、センサーやスピーチロックなどを多用する場面もありますが、

これはこれで、それらのことをしょっ中しなければならなくなり、

帰って現場にストレスがたまり、雰囲気もピリピリします。

 

利用者に対して

「●●さん!座ってて!」

と何度も言いに言ったり、

 

「ちょっと!▲▲さんが立とうとしてるよ!転んだらどうするの!」

って他の職員にうるさく言ってくる職員が出てきたり。

 

安全に転べる環境作りを

人相手である以上、転倒事故は完全には防げません。

かといって、身体拘束をするわけにもいきません。

 

どうやったって無理なものは無理という場面も多く出てきます。

 

なので考え方を変え、

「安全に転べるような環境を作る」

というのはどうでしょうか。

 

つまり、例え転んでもダメージを最小限に抑えられるよう環境を整えるのです。

 

こうすれば、利用者は大事故を気にせず動けるかもしれないし、

職員もピリピリすることなく、ある程度は見守り程度で対応できます。

 

具体的には、

部屋であれば床にジョイントマットのようなものを敷いたり、

ベッド周りや壁にクッション材を付けたり。

 

⬇️こういうものを敷いたり貼ったり重ねたり。

 

 

⬇️こちらは浴室用

 

また、認知症などで常に転倒転落リスクが高い利用者の場合、

経費が使えれば、フロアの一角に、キッズスペースのような環境を作るのもアリです。

 

⬇️こういう感じで

子供っぽい環境ではなく、必要に応じカスタマイズしていくと良いでしょう。

 

ちなみに過去、行動が予測できず認知症もあり動き回っては怪我が絶えない利用者に対し、

上記のように環境を整えたことがありました。

 

以降、ぶつけたりなどの怪我はほとんどなく、

座って過ごせる環境を作ったことで少し落ち着くようになりました。

 

おわりに

人間、転ぶ時は転ぶんです。

完全にゼロにしたければ利用者の意思や自立支援を犠牲にして、身体拘束をしなければ無理かもしれません。

 

だったら、

「転ぶことを前提」

として考え、考え方や環境を整えていった方が利用者も職員もストレスが減るのではないでしょうか。

これもれっきとしたリスク管理です。

 

それも含めて「生活をする」ことなんだと私は思います。

 

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