闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現場での悩みや葛藤に対し色々な考え方や方法を提案するという形で闘っていきます。

介護施設で訴訟となる理由をドーナツ窒息事件から考える

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先日、施設での窒息事故についての裁判の結果の報道がありました。

興味深く推移を見守っていた介護・医療関係者も多いと思います。

 

 

民事裁判じゃないのでちょっと話はズレるかもですが、これをきっかけに

施設が訴えられることについて

なぜ施設を訴えるほどの心情になるのか?

 

このことについて私なりに分析してみようと思いました。

昨今、施設が訴えられるという話も見聞きしますので。

 

 

なぜ施設を訴えるという行動をとるのか?

家族からすれば、

「自分の家族を大怪我、場合によっては死に至らしめた(過失・故意に関わらず)」

という気持ちが大きいと思いますが、

 

こう思わせるきっかけについて私は仮説をたてました。

 

①事業所側のリスクについての説明不足

契約時や普段の家族とのやりとりで、マイナスな気持ちにさせまいと、転倒や窒息などのリスクに対しての説明がなかったり不足しているケース。

中には、「絶対事故を起こしません!」と捉えられるような表現をしていることも。

 

よく見かけませんか?パンフレットなどで、

「夜間も看護師がいるのでもしもの時も安心できます」

「介護士が常に側にいて、快適な生活をお約束します」

みたいに書いてあることが。

 

そりゃ家族も

「事故なんて起きない」

「いつまでも元気で過ごせる所だ」

と思っちゃうし、

 

その中で事故が起きれば、

「話が違う!」

となるでしょう。

 

「施設は安心安全。事故は絶対起きないし利用者はいつまでも元気で過ごせる所」

というイメージを持たれるのは、

もしかしたらこういう所にあるのかもしれません。

 

できないことはできないとキチンと伝えるべきでしょう。

 

②日々の状態の変化について事業所から家族への説明不足や不備

当然ながら人間は老いていきます。

また、それに伴い心身状態も低下していくし、病気だって進行していくものもあります。

 

こういった「状態の低下」を家族に定期的に説明していなければ、

家族は状態の低下に気づきません。

 

家族の中では入所時の状態のままのイメージです。

それが、ある日顔を見に来たら、

「歩いていたのに車椅子になっていた」

「常食だったのにペースト食になっていた」

「活動的だったのに寝ていることが多くなった」

など。

 

この場合、家族からみたら「急激な変化」です。

 

「施設に入れたら弱った」って思われるでしょう。

(実際に言われたこともあります)

 

でもこれ、徐々に状態が低下して、その都度各専門職と協議するなどし、状態に応じた対応をとった結果です。

(そうしないと事故にもつながるし)

 

この、「徐々に状態が低下」していることを都度家族に説明しておくだけでだいぶ家族の気持ちも変わってきます。

 

仮に事故が起きても、

「最近歩けなくなってきてたからね」

「ムセるようになってきたからね」

と、感情的にならずにある程度理解を示してくれる場合があります。

 

「家族が心配するからマイナスなことは言わない方がいい」

なんていう意見も聞いたことがありますが、

 

マイナスだからこそ家族と連絡を密にしていかないといけないんじゃないですか?

いきなり「看取りです」なんて言われるほうがよっぽど心配するし、いらぬ疑念を持たれますよ。

 

③本人・家族が契約内容を理解しきれていない・忘れている

これは制度上仕方ない部分もあるかもしれませんが、

とにかく書類が多いんです。

契約書、重要事項説明書、ケアプラン、その他諸々…

 

しかも普段聞き慣れない言葉でビッシリ書いてあるんですよ。

それを説明しながら話をすすめていく。

 

覚えきれないし理解しきれないです。

 

理解しきれないから覚えていない。

覚えていないから「聞いてない」と錯覚する。

 

そこに事故に対する対応が書いてあったとしても。

 

かといって説明を省くことはできない。

 

こういった環境も原因のひとつなのかなと思います。

 

 

家族との連絡を密にしていこう

状態の変化、対応の変更、それに伴うリスクなど。

これらを定期的に伝えるだけで印象は変わるし、家族としても利用者の生活や状態がイメージしやすくなります。

 

例えば、

月イチで簡単な手紙を書いたりしてもいいし、

連絡用ノートを用意してもいいでしょう。

 

日々の様子が大まかにでも伝わればいいんです。

 

それをしているだけで、万が一の場合が起こっても訴訟になるほどの想いを抱かせることはそうそうないと思うし、

実際にそれで事故に対して理解を示してくれたケースも経験しています。

 

普段なかなか顔を出しにこれないからこそ、こういった配慮が大事だと思います。

 

おわりに

通常、余程悪質なことでもなければ訴訟になるなんてそうそうないと思います。

(裁判起こすのも時間もお金もかかるし)

 

今回のドーナツの件は、施設や職員に問題があったのではなく、普段の連絡や説明、コミュニケーション不足などもあったのかなと思いました。

 

そして、

単純に「無罪だ!良かった!」で終わる話ではないと思います。

 

家族にも言い分はあるし施設にも言い分はある。

そこに「そう思わせる背景」もある。

 

部外者があーだこーだ言える話じゃないでしょう。

 

しかし、こういった事例はどこの事業所にも起こる可能性があります。

だからこそ家族と連絡を密にし、利用者の「今の姿」を受け入れてもらえるように努める必要があると思います。

 

でないと、訴訟を恐れ介護現場は萎縮し、自立支援とは真逆の対応をとることになり、

結果として利用者の状態低下につながることでしょう。