以前経験した事例となります。
普段は車椅子で過ごしているけど、移乗の時はしっかり掴まり、立ち上がりも立位保持も足の踏み替えもできる人。
トイレに行きたい時は立ち上がりトイレに向かい歩き出す。
稀に、本当に稀に、ヒザ折れがあるらしいけど、少なくとも自分はその様子を見たことはない。
歩行器や車椅子に掴まれば、スムーズに歩ける。
でも、何故かいつも車椅子。
私はさすがにPTやOTなどには及ばないが、自分は利用者の状態を見極めて判断はそれなりにできる。
それなりに勉強もしてきているので。
なので、利用者の状態、表情、意向なども加味し、歩行器を使って日常生活の移動を勧めた。
特別な介助は必要なかった。
いつでも身体を支えられる位置で付き添い、
いちどに沢山の声かけはせずに場面ごとにわけたシンプルな声かけくらい。
利用者の反応も良かった。歩けることを喜び、自信を持てていた。
時々バランスを崩すことはあるが想定内。その時は身体を支えれば体勢を直せる。
状態をみるために、期限を決めて観察もした。
歩行が不安定な時は車椅子を使えばいいし。
特に問題もなかったのでそのまま周知させようとした。
…ところが、一部の職員、今で言うお局が猛反対。
「何かあったらどうするの?」
「そんなに頑張らせないで、まずはリハビリからのほうがいい」
「もっと他の活動をすすめたほうがいい」
などの理由で。
それに呼応するように、今まで好意的な意見を持っていた同僚、上司も手のひらを返した。
「不安があるから、無難な対応にしたほうが…」
「みんながみんなそれをできるとは限らない」
などという理由で。
結局日常生活の歩行は見送られ、その利用者はそのまま車椅子対応を継続することに。
結果として歩く機会を失った。
確かに入所当初に比べれば脚力は低下している。
でもまだ十分歩けるのに。
徘徊(この表現は好きじゃないけど)することもないのに。
車椅子のため、移動は実質全介助となる。
利用者は自分の意思で移動できなくなる。
そしていつしか移動は全介助。
トイレも車椅子移動となっていった。
ある日、歩けるかどうか試してみた。
…予想通りだった。
全然歩けなくなっていた。
バランスはとれず、姿勢が崩れても直せない状態となっていた。
これが介護の専門職なのか?
リスクを重視するあまり、できることとできないことの見極めもできず、安全の名の下に楽な対応を選ぶ。
それを疑問にも思わない空気、
声の強い人に意見されればすぐに手のひらを返す上司。
なぜ悪い方にしか考えられない?
歩いてもらって、歩行が不安定ならその時は車椅子にすればいい。
なぜ全部歩くか全部車椅子かの2択になる?
普段接している利用者の心身状況がわからないのか。
状態に合わせた臨機応変な対応がとれないのか。
介護職の間違った認識、間違ったリスクマネジメントで利用者の可能性を潰したくない。
そんなのは専門職じゃない。
危ないからやめるなんて専門職じゃなくてもできる。
その程度のことしか考えられないなら介護職を名乗る資格はないとさえ思う。
どうして介護福祉士は国家資格となっているのかを考えてほしい。
介護保険法や指定基準をもう一度最初から読み直してください。