常に車椅子で、「立てない」と言われており、移乗は抱えて(というか力で持ち上げて)行い、オムツ対応の方。
あまりにもトイレを気にするので連れて行ってみる。
「立てないのに」という声はスルーして。
まずは他の人がやってるように手すりに掴まってもらい立たせてみる。
…立てない。
次にお尻を支えて立たせてみる。
…立てない。
本人の状態、行動を見て、ちょっと考えてみる。
・車椅子に深く座っている
・他の人はズボンを持ったりして無理やり立たせており、本人は恐怖心からへっぴり腰になり、座ろうとする。
・トイレが狭く、本人も掴まれるところに掴まるので姿勢が不自然。
・手すりの高さが本人には高すぎる。
これらのことがわかったので
・いちばん広いトイレで介助
・体を出来るだけ前方にずらし、しっかり足を引く
・体をずらす際、ズボンと下着を下げる。
・少し距離をとったうえで介助者がしゃがみ、肩に掴まってもらうような形をとる。これで前傾姿勢がとれる。
・そのままお尻を支え重心を前に移動させ、立ち上がる。
・便座に移る。
できた。
ちなみに帰りは
・車椅子を横にし本人の前に置き、アームサポート、もしくは座面に捕まってもらう。これで前傾姿勢がとれる。車椅子と便座は高さが違うので立ち上がりに影響されるので今回は車椅子を使用。
・先ほどの要領で立ち上がり、清拭し衣類を直す。
・いったん便座に座る。
・車椅子をずらし、その場所に介助者がしゃがむ。
・介助者の肩に掴まってもらい、立ち上がる。
・車椅子に移乗。
立ち上がる前の姿勢、トイレの環境を考えることで対応できた事例でした。
もう一人も「立てない」と言われて、二人がかりでトイレ誘導している方。
利用者も職員もどちらも大変そう。
こちらもチェック。
・声かけするが理解できていない。
・軽く抱えてみた感じ、足に力が入っているのが確認できる。
ということで、
・肩を叩いてこちらに気づかせる。
・トイレを指差し、お願いする仕草をとる。
・トイレに誘導し、便座を指差し見てもらう。
・手すりを指差し、本人の手と手すりを交互に指差し、手すりに掴まる真似をする。
すると、自ら立ち上がるので、ズボンを下ろし便座に座る。
できた。
帰りも行きと同じく、指差しを駆使し、車椅子誘導。
アプローチを考えることで対応できた事例でした。
ちなみにこの方、認知症状が強く「何もわからない」と思われていましたが、この対応から、
・連れてこられた場所がトイレということは理解している。
・トイレで排泄する方法も理解している。
ということがわかります。
これらの2事例、そういう「気づき」がなければ、できる能力を見落としてオムツにされ、「立てない人」「わからない人」と思われたままとなっていたでしょう。そして本当に「できなく」なっていくのです。
また、介助側が「着脱介助をしやすいズボンをなるべく履いてもらう」
というのも大事です。
サイズが合わなく脱がせにくいと、「そこまでしてしなくていいや」
という気待ちになりやすいです。
人間どうしても、楽な方へ傾いてしまいやすいので。
「この人寝たきり」「この人認知症」というようなイメージ、先入観をもってしまうと、その方の行動全てがそういう風に写ります。
「どの部分ができないんだろう」と分析することで、まだまだ残っている能力を活かせるかもしれませんよ。
何なら「もしかしたらイケルんじゃない?」くらいの意識でもいいかもしれません。取り組みを考えることにつながるから。
ただし、何でもかんでも「やってみる」では事故のもとです。
フェイスシート等を読み込み情報を得て、何かあった時のフォロー体制を整えてくださいね。