闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現場での悩みや葛藤に対し色々な考え方や方法を提案するという形で闘っていきます。

介護現場における転倒等の事故及びヒヤリハットの対応ポイント

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介護現場において、

事故・ヒヤリハット

は、避けて通れない道であるといっても過言ではありません。

 

その場に出くわした時、利用者対応をして報告書を書いてカンファレンスをして…

そして時には上司のダメ出しと共にやり直しの指示がくることも。

 

正直時間も手間もかかるしメンタルもゴリゴリ削られます。

 

今日はこの、「事故・ヒヤリハット」の対応の仕方、運用の仕方について書いていきます。

 

 

事故やヒヤリハットの考え方

人間相手なので、事故やヒヤリハットを完全にゼロにはできません。

 

ところが事故やヒヤリハットが起こると、あたかも関わった職員の怠慢のように言われたり、

事故やヒヤリハット報告書を懲罰的な意味合いで書かせているような所もあります。

 

始末書じゃないんですよ。

 

こういった報告書というのは、

発生事例から新たな気づきにつなげ、今後のケアに活かしていくために使われるべきなのです。

 

言わば事故発生〜報告書というのは、

今まで気づかなかった情報を提供してくれているようなものなのです。

 

なので、報告書の書き方ひとつとっても、キチンと情報をまとめてわかりやすく書いていく必要があります。

 

事故・ヒヤリハットの活用の仕方

報告書は誰が見ても、それこそ家族が見てもわかりやすい書き方が求められます。

特に介護現場での事故は、利用者の普段の様子を把握しているために、細かい部分が省略されたりします。

脳内で補完できるからです。

上司からダメ出しを受けるのはココが理由です。

その利用者を知らない人から見れば、そんな報告書じゃ情報不足だと感じるからです。

具体的な書き方ポイントを書いてみます。

 

発生時の状況をできるだけ細かく書く

例えばベッドからの転落があったとします。

この時ただ、「転落している」ではなく、

転落時の身体の位置、姿勢

布団のめくれ具合

利用者の様子(表情や話の内容など)

 

これくらい書く必要があります。

 

ちなみに私は字で書くと認識違いを起こす恐れがあるので、場合によっては再現写真を撮って添付したりします。

図があった方がわかりやすいので。

 

で、更に、

前日の睡眠状況

直近の排泄状況

食事、水分量など

これらを必要に応じまとめておきます。

(普段の記録やチェック表から拾えばOK)

 

こうすることで、

どのように落ちたか予想がしやすくなります。

 

あとは「職員の怠慢ではない」というメッセージも込められています。

 

事故発生前の利用者の様子を書く

ベッド上で身体を動かすことが多かったのかどうか。

直近の巡視時の様子(ベッド上の位置や寝ていたかどうか等)

直近の排泄介助での排尿、便の量。

何か訴えがあったのかどうか等。

 

できるだけ書くことで転落に至るまでの経緯や理由が予想しやすくなります。

 

間違っても「わかりません」なんて書くことのないように。

 

報告書を元にカンファレンスを行う

ここからは他職種の力を借ります。

介護職だけでの話し合いはどうしても感覚も麻痺しやすくなるので。

まとめた情報を元にそれぞれの専門職から意見を聞きます。

 

カンファレンスは司会と記録者は分けてください。

 

予測される原因及び今後の対応の方向性を決めたところでまとめて文章化します。

 

どういう対応をいつごろまで行い、いつごろに評価をするのか。

 

ここまで決めて下さい。

でないとやりっぱなしになり、利用者の状態が変わっても対応はそのまま残って、結果として不適切対応になったり、

万が一対応策が合っていないと判断された場合、軌道修正を早めに行うためです。

 

報告書の分析

定期的に事故・ヒヤリハットを集計し、できればパソコンで傾向をまとめます。

 

こうすることで、

事故が起こりやすい時間帯

事故が起こりやすい職員の人数

事故が起こりやすい場所

事故が起こりやすい利用者(認知症、経管者など)

 

がある程度わかります。

 

時間帯、人数に問題があるならそこについて話し合います。

時には業務の見直しが求められるから簡単にはいかないかもしれませんが…

 

場所に問題があるなら環境の見直し、

 

利用者の傾向であれば似たような利用者にも事故予防として応用できます。

 

過去、ここまで話あったことが実際にありますが、

分析だけして具体的な対応までは決めず、何となく話し合いが終わったことが多々ありました。

そりゃ事故も減らないよな…と。

 

どこに問題があるかを具体的に分析し、

どういう方向性でやっていくかを具体的に決めなければ話は絶対進みません。

 

話し合いが進まない「感覚の麻痺」

以前、こんな事例がありました。

「利用者が一人でトイレに行き転倒。対策として、別のトイレ(手すりの高さが違う)を使ってもらう」

 

しばらくはそれで事故もなく生活していました。

月日が経ち、トイレは一人で行けなくなり、全介助に。

 

先の転倒でトイレの場所を変えたが、そこは介助がやりにくい。

 

で、転倒時に使っていたトイレを試したらスムーズに誘導できました。

 

ところが周りからは、

「前にそこのトイレ使って転んだよね?何考えてるの?」

 

でした。

 

利用者の状態が変わっているのに、対応を振り返らずにやってきた弊害です。

 

ちなみに先の転倒の原因は、

「一人で立ち上がってバランスを崩した」

でした。

 

全介助の状態なら同じ事故は起こらないでしょうよ。

 

事故の原因を具体的に分析せず、トイレの場所が悪いという思い込みと感覚の麻痺が生んだケースでした。

 

おわりに

繰り返しになりますが、

報告書は懲罰的なものではありません。

気づきを生み、今後の業務につなげるための貴重な情報源です。

 

事故は起こってほしくはありませんが、

同時に「あれ?ここまでできるんだ!」という気づきになります。

あとはどの部分に気を付ければ良いのか検討し、できる対応を行なっていく。

この気づきのおかげでオムツの人がトイレに行けたりもしました。

 

リスク管理と自立(自律)支援。

ほどよいバランスでやっていきたいものです。