介護施設では、フロアで優先なりCDなりを流している施設も多いと思います。
普段何気なく流れている音楽、実は色々なメリットがあるのです。
流す音楽についてあれこれ言ってくる人もいますが、それも踏まえて考えてみたいと思います。
- 介護施設で音楽を流す意味とは
- 介護施設で流す音楽の偏見・思い込み
- 利用者と音楽にまつわるエピソード
- おわりに
- 番外編:ブログ管理人のオススメBGM
介護施設で音楽を流す意味とは
音楽というとレクなどで流すイメージかもしれませんが、
普段からフロアや浴室などで流していても良いと思います。
それは、
利用者の緊張感の緩和
職員のリラックス効果及びモチベーション維持
話のネタになる
など、良いことばかりです。
一日中テレビをつけっぱなしでいるよりよっぽど良いと思います。
順に解説してみます。
①音楽を流すことで利用者の緊張感の緩和をはかる
エレベーターの中、
医者で順番待ちをしている時、
バスやタクシーの車内、
研修で席に座っている時など。
他人と同じ空間で過ごす時って、何となく緊張しませんか?
しかも、そこで一切の音がなく、シーンと静まり返っている時。
早く帰りたいなー。
早く目的地に着かないかなー。
早く終わらないかなー。
って、無意識に思うし、心の中でちょっと構えたり、警戒しているのがわかります。
少なからずストレスになっているということです。
でも同じ場面で、何か音楽、もしくはラジオが流れていたらどうでしょう?
ちょっとリラックスできると思います。
最近待合室やエレベーターなどで音楽が流れているのは、そういう理由もあるのかなと思います。
②好きな音楽を流して職員のリラックス効果及びモチベーションの維持
仕事中、好きな音楽を流していいなら、仕事もちょっとリラックスしながらできます。
中には
「●●を流すことで頭が仕事モードに切り替わる」
て人もいるかもしれません。
そして順番に皆がそれをできれば、雰囲気も良くなるのではないでしょうか。
それに好きな音楽を通してコミュニケーションもとりやすくなるかもしれません。
介護施設で流す音楽の偏見・思い込み
ぶっちゃけ、BGMとして流れている音楽はジャンル関係なく、利用者への影響はほぼありません。
にも関わらず、
「高齢者施設なのにJポップを流すなんて!」
「こんな今時の曲、高齢者は聴かない」
「高齢者なんだから民謡とか童謡を流すべき」
なんていう意見をよく聞くし、現場で言われたことも多いです。
音楽を聴くことが目的であれば、
利用者が好きだったり馴染みがあったりする音楽を調べて流す方がいいと思いますが、
バックミュージック・生活音の一部として音楽を流すのであれば、
よほど大音量だったりガチャガチャしたもの(メタルやハードコアパンクやサイコビリーなど)
でなければ何を流しても利用者の反応は変わりません。
考えてみてください。
テレビで流れてる音楽、効果音。
アップテンポのものもあれば最新のヒット曲が流れてますよね。
利用者がそれ見て怒ってますか?苦情出てますか?
同じ音楽で、テレビは良くてCDプレーヤーは何でダメなんですかね?
そういうところに偏見と思い込みを感じるのです。
職員それぞれが好きなCDを持ち込む
仕事中でなくても、例えば街中で好きやアーティストの曲が流れてたり、
初めて耳にするけど好きなタイプの音楽が流れてたら、
「おっ!私の好きな曲!」
って思いませんか?
好きな曲は人によって違う?まあそりゃそうです。
じゃあラジオやお店の中、街中などで
特に興味のないような音楽が流れてた場合、
それに対して不快感やイライラが出たりしますか?
おそらく、生活音の一部として聞き流れていると思います。
「だったら職員が好みの音楽流した方がモチベーション上がっていいじゃん?」
て思うのです。
高齢者施設に流す音楽についてアレが良くてこれはダメとか言うような人は、
レクなどの一環として音楽を聴かせることが目的の場合と、
バックミュージックとして流すことが目的。
これらの違いをわかってないんだと思います。
いくら何でも、演歌が好きな利用者に音楽を聴いてもらおうとして、パンクロックを流すようなことはしませんよ。
そういう配慮もできないとでも思ってるんでしょうかね?
利用者と音楽にまつわるエピソード
これは別のSNSにも書きましたが、このブログを見てくれている方にも見て欲しいので、紹介します。
軍歌を聴いた利用者の反応
私が配属された施設は、戦争を生き抜いてきた世代の方が多いところでした。
なので、軍歌を流したらどうだろうかと、利用者何名かのお部屋で流してみました。
ある男性利用者の軍歌に対しての反応
その男性利用者は、戦地に赴き前線で戦い抜いた方。
軍歌を聞いた後の反応は、
「機関銃持って敵を撃ったんだ。●●の森の中を逃げ惑う奴らを。俺は強かったんだ。だからこうして生きている。
でも俺も撃たれてね。その時の傷がまだ残ってる。」
と、当時の話を誇らしげに話してくれ、その時の彼の表情は締まっていて、背筋も伸びていました。
おそらくは、優位に立っていた部隊、もしくは優位にたっていた時代に兵隊として戦っていたのではと思います。
ある女性利用者の軍歌に対しての反応
これは私の失敗例です。
ある女性利用者に対し、軍歌を流しました。
ご主人も健在であり、問題ないだろうとの安易な考えでした。
ところがその利用者は、
「ああ、これを聴くと連れ合いが戦争に行ったことを思い出してつらい。これを聴きながら見送ったんだ…」
と、寂しそうな顔で話しました。
もう帰ってこないかもしれない。
それくらい極限の精神状態だったのかと思われます。
だからでしょうか。徐々に心身機能が低下し、つじつまがあわないような会話になる場面でも、お互い変な顔もせず、ずっと二人で笑顔で話をしていました。
好きな歌を聴いた利用者の意外な反応
普段はボソボソと小声で、更に話の内容が支離滅裂に聞こえる利用者がいました。
コミュニケーションがうまく取れず、表情もあまりかわらない。
そして転倒必至なのに何度も突然立ち上がろうとしたり、他の利用者の部屋に入って物をいじったり…
便秘?水分不足?家に帰りたい?それとも何らかのストレスがかかってる?
皆で考えては結論が出ず、いつもその場しのぎの対応をしていました。
ある日、いつものように聞き取れないボソボソ声を聞いていたら突然
「こしじ●▲□…」「ろくでなし…」とポロっと漏らしたことがありました。
もしやと思い試しに越路吹雪の「ろくでなし」を流したら、
物凄く流暢に、しかも歌詞を見ずに完璧に歌い上げた上
「私越路吹雪好きなの」とはっきり話したんです。
「え!?こんなに流暢にしゃべれたのか●●さん!」
と思ったのと同時に、
自分でもよくわかりませんが何か感動したのを覚えています。
その後その利用者、渡した歌詞カードを見ながらアルバム1枚丸々聴いており、曲に合わせて歌詞カードもめくっていました。
音楽の無限の可能性を感じた瞬間でした。
おわりに
介護施設で音楽を流す場合、その目的を理解していれば、
ジャンルがどうとか考える必要もないと思います。
それだけ音楽は日常生活の一部になっている。
繰り返しになりますが、
レクなどで「音楽を聴く」ことが目的であれば利用者の馴染みのあるものを流せばいいし、
バックミュージックとして流すなら基本的に何でもいいと思っています。
音楽は形や数字には表せない、
人を元気にしたり逆に悲しませたりといった、感情に働きかける効果があります。
また、ほどよく緊張感を取り除いてくれる効果もあります。
偉大なんです。音楽のチカラは。
番外編:ブログ管理人のオススメBGM
ここまで音楽について書いてきたので、
せっかくなので私のシーン別使用CDを紹介してみます。
小話として読んでみてください。
(音楽好きなアナタのために購入用リンクもつけておきます)
バックミュージックで使用するCD
JUJU 「DELICIOUS」
女性シンガーJUJUのジャズのスタンダードナンバーのカバーアルバム。
歌モノでしっとり聴かせるナンバー。
曲調も聴きやすく仕上がっている。
PE'Z 「黒船のJAZZ」
インストジャズバンドPE'Zのカバーアルバム。
こちらもジャズのスタンダードナンバーのカバー。
インストのジャズのナンバーをアップテンポに大胆アレンジ。
一見ガチャガチャして聴こえるが、BGMとして適度な音量で流すと意外に違和感ないです。
PIANO JACK 「FIRST BEST」
ピアノとカホンのみで幅広い音楽を奏でるインストバンド
PIANO JACKの初期の2枚組ベスト。
疾走感がある曲からじっくり聴かせる曲まで。
ちなみにディズニーやファイナルファンタジーのカバー曲も入ってます。
手島大輔「TRIO」
以前このブログでも載せましたが、再掲。
(それだけ気に入ってるので)
ジャズギタリスト手島大輔のインストミニアルバム。
その名の通りトリオ編成で、時折入るフラメンコのようなアレンジがかっこいいです。
ほどよいテンポのアコースティックナンバーを聴かせてくれます。
LITTLE TEMPO 「太陽の花嫁」
こちらも再掲。
レゲエ・ダブに和の要素が入ったような、そんなインストナンバー達。
ゆったりしたリズムなのでBGMとして流しても違和感なし。
THE POKER DOTS 「cocktail swing」
こちらは洋楽ですが、スウィングジャズバンド
THE POKER DOTSのアルバム。
スウィングジャズといってもアコースティック編成なので落ち着いており、かつしっかりスウィングしており聴きやすい。
メロディも覚えやすい。
レクなどの活動時に使用するBGM
ラーナーズ「ラーナーズ」
モデルの紗羅マリーがヴォーカルのバンド、ラーナーズ。
ロカビリー を基調としているがバキバキのロカビリーではないためポップスとして聴ける。
跳ねたリズムが多いので、レクなどの活動時に流すといい感じ。
HILLBILLY BOPS 「DOWN THE LINE」
こちらも過去ブログ再掲ですが最近7インチシングルが再発されたので(笑)
ロカビリーバンドですがどことなくジャニーズっぽい要素もある。
コテコテのロカビリーにはなってないのでポップで聴きやすい。
私はチェッカーズを連想しました。
OPERATION IVY 「OPERATION IVY」
パンクロックバンドRANCIDのメンバーがRANCID前にやっていたバンド。
パンクではなく、今でいうスカコア。
激しすぎず、スカのリズムでほどよいテンポ。
THE ACE CATS 「THE BEST OF ACE CATS」
ロカビリーバンドTHE ACE ACEのベスト盤。
ロカビリーだけどパーティで流れてそうな曲が多い。
なので活動量の多いレクなどで盛り上げる感じで流してます。
THE VENUS 「ゴールデン ベスト」
ロカビリーバンドTHE VENUSのベスト盤。
昭和な雰囲気もあり、もしかしたら聞いたことがある利用者もいるかも。
ちなみに以前、若い頃このバンドの曲でツイストを踊っていたという利用者がいました。
oi-SKALL MATES 「12MATES SKALL NIGHTER Woo」
SKAバンドoi-SKALL MATESのアルバム。
管楽器が入り、テンポ良い曲が並ぶ。
スカパラが好きな方なら気にいるはず。
それぞれが好きな音楽を聴いてもらう場合
誰がどんな曲を好むのかは未知数なので、ある程度利用者から好みを聞くなどし、スマホか何かで流すと良いでしょう。
下記のような音楽配信アプリなどですぐに検索し流すことができます。
更にBluetooth対応小型スピーカーがあればテーブルに置いて音楽を流せます。
スマホのスピーカーだけでは音量不足なので。
ユニットに1つあると結構使えますよ。