利用者が離床して過ごす時、椅子や車椅子などで過ごすことがほとんどだと思います。
この時、「姿勢」を気にかけてるでしょうか?
不適切な姿勢、不適切な座位環境で長く過ごすと、様々な弊害を引き起こすばかりか、
拘縮や褥瘡の原因になることもあります。
今日はそんな生活場面における
「座位姿勢」
について書いていきます。
生活場面に応じた姿勢設定の大事さ
ご飯を食べる時、
仕事や作業をしている時、
一息つく時、
調子が悪い時など。
それぞれの場面で皆さんはどういう姿勢になってるか想像してみてください。
全く同じ姿勢でいることってないと思います。
ところが、施設の利用者を見ると、
どの生活場面でほとんど変わらない姿勢でいる場面をよく見かけます。
中には移乗した姿勢そのままのことなんてこともありました。
たまに気にかけていることもありましたが、せいぜい角度の調整くらいなもんです。
姿勢といっても角度だけじゃないです。
足の位置、頭の角度、お尻の位置など…
本来は生活場面によって変えていかなければなりません。
ここを間違うと、「不良姿勢」となり、様々な弊害を引き起こしてしまいます。
生活場面に合わない姿勢・座位環境が引き起こす弊害
椅子や車椅子の背もたれに寄りかかっている状態での食事はしにくいし、
場合によっては誤嚥を引き起こしたりすることもあります。
(自分でやってみるとわかります)
反対に食事をとる姿勢のまま長時間過ごすのは疲れるし、疲れからの姿勢崩れや意欲低下を引き起こすこともあります。
また、身体に合わない椅子や車椅子(大きすぎたり小さすぎたり)で長時間過ごすのは、姿勢崩れからの褥瘡や拘縮の可能性があります。
何でわざわざこういうことを書くのかというと、
要介護者は自分で姿勢を直せず、座らされたそのままの状態で過ごすことになること、
また、クッションなどで姿勢を「固定」されていることが多いからです。
うっかり不良姿勢のままだと、それが長時間続くということになります。
それで心身に悪影響を及ぼしたりしたら目もあてられません。
だからこそ、場面に応じた過ごしやすい姿勢に気をくばり、適宜姿勢を直していく必要があるのです。
頭の角度、背もたれの角度、座面の高さ、足の位置、お尻の位置…
場面に応じクッションなどで角度をつけたり、
足代を置くなどするだけで大分変わってきます。
ただし、利用者の身体状況は様々。
体格も違うし、円背がある人もいるでしょう。
全部が全部同じ対応ではダメです。
そこは機能訓練指導員等と連携し、個別に調整していけばよいでしょう。
なので本ブログでは個別の調整等には触れず、気づきとして知っておいた方が良いと思うことを書いていきます。
①利用者によくありがちな「すべり座り」の弊害
「すべり座り」「ずっこけ座り」
などと呼ばれるこの姿勢。
見るからに安楽じゃありませんね。
この姿勢、クッションも何も入れない状態だと、
背中と仙骨付近に集中して圧がかかり、
更に皮膚は引っ張られます。
利用者は滑り落ちまいとふんばるため、尚更それに拍車がかかります。
この状態で長時間いると、褥瘡リスクは跳ね上がります。
更には呼吸がしにくくなり、体調にも悪影響を及ぼします。
「じゃあ直せばいいじゃん」と思う人もいるでしょう。
確かにその通りなんですが、すべり座りが深刻な人の場合、
直しても直しても時間が経つとすべり座りになる
ことがあるのです。
つまり、すべり座りになる原因がどこかにあるということ。
しかも、すべり座りだからと引きずって姿勢を直そうとしたりしてると、褥瘡発生待ったなしです。
同一姿勢による局所の圧迫と、引きずることによる摩擦のダブルパンチなので。
なので、
座面が高すぎたり低すぎたりしていないか?
車椅子の場合は背もたれが張りすぎていないか?
フットサポートの位置が体格に対して前すぎていないか?
などなど、
他専門職と相談しながら原因を追及し、すべり座りとなる大元の要因を潰していかなければ解決はしないでしょう。
いずれにしても、
「この人こういう座り方だから」
とスルーしていると、後で大変なことになるかもしれませんよ。
②圧抜きの大事さ
さきほど、すべり座りを例にとった不良姿勢で、
大元の要因を潰すと書きましたが、そうはいってもすぐ簡単にはいかないことも多いです。
原因を調べて、他の専門職と協議し、対応を決定するのに、それなりの時間も道具も必要でしょう。
その間、何もしないというわけにはいきません。
そこで役に立つのが「圧抜き」です。
圧抜きグローブ(こういうの⬇️)を使ったりして、
背中やお尻にスーッと手を入れ、なぞるように手を動かします。
こうすることで、引っ張られた皮膚が元にもどり、ラクになります。
これを持ち歩き、利用者の側を通るたびに圧抜きをしていけば、局所の圧と皮膚の引っ張られを防ぐことができます。
私はこれを常に持ち歩いており、姿勢が気になる人に圧抜きをしたり、夜の体位変換時に使って安眠を妨げずに徐圧をしたりしています。
(画像から購入もできるので興味ある方はどうぞ)
ただ、どうしてもこれを使わなきゃいけないわけじゃないです。
座り直しをしたり、身体を前傾させたりして圧抜きもできるので。
車椅子で過ごすことが多い場合の注意点
介護施設を利用している人たちの中には、身体の状態や病状、外傷などの理由で車椅子を使っている人も多いでしょう。
車椅子使用時の姿勢の注意点について書いていきます。
①座面に直接座らず、クッションを使用する
車椅子の座面(スリングシート)は、簡単に言うと布一枚の椅子です。
車椅子は移動するためのものであり、たたんで持ち運ぶものであるため、このような造りになっています。
通常、椅子であれば座る部分のクッション部分の裏に、木など固い材質のものがあり、これでお尻全体をしっかり支えられるようになっています。
(皆さんの家や事業所にある椅子をひっくり返してみてください。)
車椅子は前述した造りのため、布一枚の上に座る形になります。
裏面の固い「支え」がないため、長時間座っているとだんだんたわんできて、
お尻の真ん中に集中的に圧がかかります。
そしてそれは褥瘡リスクが増大し、さらに腰痛なども引き起こします。
なので、クッションが必要とされているのです。
クッションで座面のたわみを防ぎ、更にお尻全体を支えることで、
こうした問題の解決につながります。
②両足はフットサポートではなく地面につける
フットサポートは車椅子の前側に極端に出ています。
それは、移動の際に足が引っかからないようにするためです。
そんな位置にあるフットサポートに足を乗せてると、足はかなり前の方に投げ出されるような形になります。
こんな体制では、リラックスして離床できないでしょう。
足が前の方にあるため身体が不安定になりやすいです。
通常、椅子に座っている時はここまで足は前に置いてないはずです。
自然に足を地面におろした形になっていると思います。
繰り返しになりますが、車椅子は移動目的のものであり、
座って過ごすための椅子として使うには不十分といえます。
なので、車椅子で過ごす場合は、
足が自然に地面に着く状態=フットサポートを外す
となるのです。
この時足が地面に着きにくい場合、必要に応じて足台を用意すると良いでしょう。
自然な座位環境を作るのです。
おわりに
利用者が普段何気なく椅子や車椅子に座っている様子は、
「ここに●●さんがいるな」
くらいにしか見えていないこともあります。
しかし、
きちんとした座位環境でなく、きちんとした姿勢を作れる環境でないと、
離床そのものが苦痛となります。
それで体調の変化や活動意欲の低下になってはもったいないです。
人間、何をするにも、その場面に応じた姿勢があります。
自分で姿勢を直せなかったり、意思を伝えることが難しい人達が多い仕事だからこそ、
そうした「気付き」を身につける必要があると思います。