介護現場では、
体格のいい人や拘縮の強い人、全身脱力している人などもいて、
更にそういった人たちを全介助で移乗したりベッド上で身体の位置を直したりする必要が多くあります。
当然ながら職員の負担もあり、中には腰を痛めてしまうことも少なくありません。
介護現場では時間に追われ、少々大変でも力任せに勢いでこういう人たちを介助してしまう(余儀なくされる)こともありますが、
自分の身体と利用者の身体を守るため、道具などに頼る必要があると考えます。
ベッド上の移動や移乗にはスライドシートやスライディンググローブをオススメします
簡単に説明すると、
スライドシートは「でっかいビニールみたいなシート」
スライディンググローブは「ビニールの筒みたいなもの」
といったイメージです。
これを利用者の身体の下に敷くなどすることで摩擦をなくし、滑りやすくなることで身体を動かしやすくなります。
シートを敷いたりグローブをつける手間はありますが、ささいな時間です。
長期的にみて、
ベッド上を引きずって身体の位置を直したり、
無理矢理抱え上げたりするなどの無理な介助で腰を痛めたり、利用者に不快感を与えてしまうことを考えれば、
シートやスライディンググローブを使ったほうが負担は少ないといえます。
スライドシートの利点
スライドシートの利点を下記にまとめました。
結構便利なんですよ、コレ。
参考までに、スライドシートはこういう感じのものです。
「シート」と言うだけあって、小さく折り畳んで持ち運べます。
必要な時にサッと使えます。
(画像リンクから購入もできます)
①身体の位置を直す
よく知られているのは、ベッドで臥床している人の身体の下に敷き込み、身体の位置を直すことでしょうか。
身体をベッド上方に移動させたり、端に寄りすぎた身体を中央に戻したり。
身体の位置を適切な位置にしておかないと、安楽な姿勢はとれず、不快感や皮膚トラブル、最悪の場合褥瘡にもつながりかねません。
こうした
「全介助の人のベッド上での身体の移動」
は、職員にも利用者にも負担は大きいです。
力と勢い任せで半ば引きずるように移動させている場面も多く見かけます。
そういったことも、身体の下にシートを敷くことで摩擦が減り、スッと簡単に移動できます。
双方、身体への負担が段違いです。
②移乗
スライドシートは移乗にも使えます。
端座位にしたあと、利用者の身体を傾けてお尻の下に敷き込みます。お尻半分程で大丈夫です。
で、そのまま車椅子までシートを伸ばす。
スライドボードのように使う感じです。
ベッドと車椅子の間の隙間には、タオルを丸めて対応します。
あとはシートにそって利用者の身体を滑らせて移乗する。
足をぶつけないよう気をつけて。
③小さくたたんで持ち歩ける
スライドシートは「シート」というだけあってたたんで持ち歩けます。
極端な例ですが職員が一人一人これを持ち歩けば、突発的な移乗やベッド上の姿勢修正などをみかけた際、その場ですぐ修正できます。
事業所が十分な枚数を用意してくれればいいですが、
事業所備品だと、必要枚数がなかったり、
いちいち取りにいく必要があったり、
管理があーだこーだと面倒なので、
私は自費で購入して持ち歩いてます。
多少変動しますが大体CDアルバム1枚ぶんくらいの価格だし、
自分のものなら気楽に使えるので。
スライディンググローブの利点
続いてはスライディンググローブの利点です。
シートと違い手〜腕をすっぽり覆うものです。
こちらはシートとは違った使い方ができます。
①離床時の圧抜き
椅子や車椅子で過ごしている時、
介護が必要な人は自分で姿勢を直せない場合が多いです。
そのため同じ部位(臀部など)に圧がかかり、そこからくる痛みや不快感から逃れようとするため、
すべり座りや傾きにつながりやすいです。
一見問題なく座っているように見えても、実際は背中やお尻に圧がかかりっぱなしで痛みや不快感を持っている可能性もあります。
かといってそのつど座り直しをするのも大変だし、
この時も力と勢いで引き上げるような介助をしている場合は職員にも利用者にも負担がかかります。
そんな時、このグローブをつけ、定期的にスーッと身体をなぞっていくと、
引っ張られていた皮膚が戻り、圧抜きができます。
スーッと身体をなぞるだけなので、時間もさほどかかりません。
ただ、すべり座りが常時起きている場合、別の理由が考えられるので、
機能訓練指導員などと連携し、対応していく必要があります。
大元の原因を潰さなければ根本的な解決にならないので。
②体位変換の効率化
ベッドで臥床している時間が長い人や夜間など、
体位変換を行っていると思います。
実際にやっている人はご存知と思いますが、
一般的に体位変換をするには、
布団をめくって、クッション類を外して、身体の向きを変えて、姿勢を整えて、またクッション類をセットしなおして、布団をかけますよね。
しかもそれが何度も繰り返されるわけです。
夜であれば熟睡できないでしょう。
スライディンググローブを使うと、
頭からかかとまでをスーッとなぞるだけで圧抜きができます。
布団をはいだり、利用者の身体を動かすなどの動作のほとんどを簡略化でき、最低限の動きで徐圧できるので、眠りを妨げにくくなります。
また、体調が悪かったり痛みがあったりなどで体位変換をしにくい人の徐圧にも使えます。
ただし、利用者の身体状況を考慮せず、誰かれ構わず使っていいというわけではありません。
そこは他専門職の見解も聞きましょう。
体位変換についてはこちらの記事でも触れています。
③小さくたたんで持ち歩ける
スライドシート同様、スライディンググローブも小さくたたんで持ち歩けます。
なので、フロアで過ごす利用者の横を通る時、
ついでにスーッと圧抜きをしたり、
何かの用事で利用者の居室に入った時、ついでにスーッと身体をなぞって圧抜きをしたりできます。
多少差はありますが価格もスライドシートとさほど変わらないものもあり、
こちらもスライドシート同様、個人で持ち歩いていたほうが良いと思います。
そうすれば気づいた時にすぐに対応できるので。
これも事業所備品だと必要枚数がなかったり、
いちいち取りにいく必要があったり、
管理があーだこーだと面倒なので…
ちなみに私はスライディンググローブも自費で購入して持ち歩いてます。
参考までにこれもリンクを下記に貼っておくので、興味のある方は是非。
おわりに
スライドシートもスライディンググローブも、よほど雑な使い方をしなければそうそう破れません。
CDアルバム1枚程の価格で介助が楽になり自分の腰を守れるなら、ひとつ買っておいても良いと思います。
職員の身体も利用者の身体も、壊してからの方が大変なので…