闘え!介護職

介護施設での実体験、学んできた知識等を書いていきます。主に施設の介護職員向きです。現状に対し色々な方法を提案するという形で闘っていきます。

物を渡したがる利用者の話

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私は特養が長いですが、

デイサービス、ショートステイ、そしてケアマネの経験もあります。

 

そこで、職員によく物を渡そうとする利用者がいました。

 

ほとんどが食べ物。時々衣類など。

 

 

当時、他の利用者に渡してないからまあいいかという認識でした。

その気持ちは否定するものでもないし。

 

 

月日がたち、今度はお金を持ってきて、職員に渡そうとするようになる。

 

「あなた、赤ちゃんいるでしょ?これでオヤツでも買ってあげて」

「あなたたち、いつも忙しそうにしてるから、飲み物でも買っといで」

 

などと。

 

 

気持ちはありがたいけど規則なので受け取れない旨を私含め皆伝えていた。

 

それでも渡そうとしてたけど、金品は受け取れないので、丁重にお断りしていた。

 

 

「みんなして、受け取れないの一点張りで、あんまりいい顔してないよな絶対」

 

と思っていたある日、

 

「ねえ、自動販売機まで連れてってくれない?ノドが乾いたから」

 

と話があったので、自動販売機まで車椅子を押していきました。

 

 

そして、

 

「私背が低くて届かないからお金入れてボタン押して」

 

と話があり、お金を受け取り投入口へ。

 

「どれにしますか?」と私。

 

本人の指定する飲み物を代わりに購入ボタンを押す。


が、


「あれと、これと、あとあの端っこのも買って」

と、どんどん数が増えていきました。


子供や孫に買ってってあげるのかなと思ったら、

 

「はい、コレあなたたちに!お金はだめなんでしょ?これならいいでしょ。みんなで飲んで下さい」
と、今さっき買って袋に入れたジュースをそっくり渡されました。

 

これには、

 

「やられた!お見事!」

 

と思いました。

 

 

これで終わりならただの笑い話になるかもしれません。

 

 

 

 

いつもニコニコしており人当たりのいいその利用者。

 

でも、どうしてここまでして物を渡したがるんだろうと考えました。

 

 

確かに、何かをしてもらったお礼に物を渡すのは、人間関係を円滑にする潤滑油となります。

 

 

職員に介助をしてもらっているからなのか…

とも思っていましたが、

 

ある日を境にその利用者は事業所に来なくなりました。

 

「どこかに入所したのかな。でもまだ十分動けてるしなあ」

 

などと皆不思議に思いながらも、更に月日は流れ、いつしかその話も出なくなりました。

 

 

それから1年後。

 

新聞の「お悔やみ欄」にその利用者の名前が。

 

 

ここで初めて、その利用者を取り巻く環境を皆が知りました。

 

 

家族関係が複雑で、今で言う身体、精神、経済的虐待を受けていたこと。

そのため介護サービス事業所以外で他者と関われることができなかったことを。

 

 

 

今となってはわかりませんが、

サービス利用時にいつもニコニコしていたのは、

 

そういった環境のために頼れる人がいない中、周囲を不安にさせまいと気丈にふるまっていたのかもしれません。

 

物を頻繁を渡そうとするのも、仕事とはいえ自分に親身になって介護をしてくれる職員への精一杯の感謝の気持ちだったのかもしれません。

 

介護サービス利用時にしか、他者と関われる機会がなかったのかもしれません。

 

持ってきたお金が少額だったのも、まとまったお金があるとわかると取り上げられていたのかもしれません。

 

 

そして今になって思えば、

 

着替えがいつもヨレヨレで、洗ったのかどうなのかわからないものばかりを持ってきていた。

 

そのカバンもボロボロだった。

 

 

「家の人にお土産ですか?」などと聞いても、

「いや、家には持っていけないんだ」という返答。

 

 

これらの場面から、関係職種に報告、相談しておけば何か手を打てたのかもしれなかった。

 

当時は若くそういった気づき、知識、経験も乏しく、そういう部分に気付けなかった。

 

更に、他の職員や上司もそういう気づきはなかったようでした。

 

 

 

 

 

病気など、何らかの事情で自宅での生活が困難になり、

介護サービスの利用となります。

 

そして事業所は自宅とは違い、どうしても生活内で大なり小なり制限が出ます。

 

そういった中でその利用者は、今自分にできる精一杯の感謝を表していたのでしょう。

 

私はそう思っています。

 

 

 

 

利用者に何かをあげると言われて、

 

「いや、受け取れません」

 

の一言で済まさず、

 

 

利用者の感謝の気持ちを受け止めた返答を心がけていきたいと思った事例でした。